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あいTV(H15.02)
篠永酒造主屋 篠永酒造住所

法皇山脈の裾野が段丘状に迫る旧道沿いに立つ篠永酒造=篠永治孝社長(72)は1886年
(明治19年)の創業で酒名は「森之翠」 昔、この辺りは森が多く、地名も正の森と言われ
そこからの命名である。創業以来、数百m南の森の中にある小さな龍王の滝の水を引いて
酒水につかっている。いずれ五代目を継ぐ長男の和宏専務は「蔵元にとって水は命、仕込前の
10月には滝にたまっている枯葉や枝を掃除して気分を新たに酒造りに臨みます」

最盛期の1975年ごろには三千三百石(約60万リットル)を仕込んでいた。
いまはその一割にも満たない二百五十石(四万五千リットル)だが小さい蔵だからこそ
手を抜かない細やかな造りを心がけている。

甘口が多い本県の蔵元のなかでも同酒造は伝統的に辛口を造ってきた。
というのも代々岩手県の南部杜氏の流儀だからである。酒米は近隣の農家に委託している
山田錦、松山三井を主に使い、山廃造りに力をいれている。
なかでも蔵付きの酵母を使う山廃造りは、速醸法と比べると倍以上の手間と時間が掛かる。
伝統的なスッキリした辛口のなかにもコクと膨らみがあるのが特徴。
ちょっとあぶったイリコに味噌をつけて飲む山廃仕込の酒
「冷やでよし、ぬる燗でもうまい絶妙のマッチングです」和宏専務のお薦めである。
同酒造には珍しく女性の蔵人が働く。
パート的に女性の手を借りる蔵元は何件かあるが、原則的には”女人禁制”の蔵元で正式の
蔵人としては、おそらく県内で初めて、といわれている。香川県出身で愛媛大農学部をでた
宇高育子さんがその人。大手食品メーカーに勤めていたが、どうしても杜氏になりたくて
同酒造の門をたたいた頑張り屋である。
「彼女は酒も強いし、利き酒は大したもので、男顔負けですよ」と和宏専務は目を細める。

四国霊場のうち本県では最後になる六十五番札所・三角寺に通じる遍路道に面した同酒造の
母屋、土蔵、酒蔵、米蔵などが昨年九月、国の登録有形文化財に指定された。
明治初頭に建てられた同酒造は、数少なくなった明治の面影を残す蔵としても貴重な存在に
なっている。

「酒蔵探訪・女性蔵人正式に雇用」愛媛新聞 2004/09/04 掲載より